君が涙を忘れる日まで。
この恋にさよなら。


 *


明日は始業式だというのに、中々眠ることができない。


お正月は家族で香乃の家に行くことが多かったけど、今年はお婆ちゃんに会いたいと私が我儘を言って、香乃の家には行かなかった。

それでも香乃は明けましておめでとうという可愛いスタンプを送ってくれて、私はシンプルに[あけおめ]と送っただけ。



ベッドに寝転び分厚いアルバムを開くと、香乃と一緒に写った写真ばかりが貼られている。

私はそのうちの一枚にそっと手を添えた。


二人とも目を潤ませ鼻を真っ赤にして、でも笑っている写真。


小学校一年生の時、私は黙ってお母さんのネックレスをつけていったことがあった。香乃に見せたくて。

でも遊び終わった時にネックレスがないことに気付いて、私は大泣きしたんだ。

『お母さんに怒られる、どうしよう』って。


そしたら香乃は、黙って一緒に探してくれた。

空が茜色に染まっても、夕焼けチャイムが鳴っても、必死に探してくれたんだ。


でも結局見つからなくて泣いてばかりだった私に、香乃が言ってくれた。


『大丈夫。私も一緒に謝るから。怒られる時も、二人一緒だよ』



勿論お母さんには怒られたけど、香乃が隣にいることでどれだけ心強かったか。

怒られている間もずっと手を握ってくれていた香乃を、私はこの先なにがあっても守ろうって、そう誓ったんだ。



アルバムを閉じた私は、香乃にLINEを送った。


[バスケ上手くなりたいから、これからは朝早く行くことにした。ごめん。]


香乃から返信があったけれど、私はそれに気づかない振りをして、眠りについた。





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