君が涙を忘れる日まで。
香乃からも、話があるから会いたいと何度も連絡が来たけれど、私はそれをずっと避けてきた。


『付き合うことになった』

そう言われるのが怖かったから。


真面目な香乃は、メールやLINEでそれを伝えるようなことはしなかった。

このままずっと逃げていれば、聞かずに済む。




授業が終わり、部活に向かう途中、廊下に香乃が立っているのが見えた。


私は視線を落としたまま、香乃の前を通り過ぎようとした……その時。


「奈々」


香乃が私の名前を呼び、強く腕を掴んだ。



「奈々、私ね……」


「ごめん、早く部活行きたいから」


「でも、あの」


「私は真剣に部活やってるの!ただ誰かを見ているだけの香乃とは違う!」



そう言って、香乃の腕を振り払った。




なんで、どうして……。


痛いよ……。


香乃の告白を聞いた時より


ずっと、痛い。



酷いことを言ったのは私なのに。




大好きなはずの手を振り払ったのは



私なのに……。




胸が苦しくて


もう、消えてしまいたかった……。







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