君が涙を忘れる日まで。
あんなに素直だったのに、あんなに感情を剥き出しにしていたのに。

知らず知らずのうちに少しずつ大人への階段を上っていた私達は、人の感情に敏感になり、素直になることを忘れ、そして嘘をつくようになっていく。


大好きな香乃を悲しませたくない。でも、私の気持は行き場を無くしてしまったから……。



「樋口?大丈夫か?」

「あっ、うん、ごめん」

「なんか俺、余計なこと言っちゃたみたいで。ごめんな」

「ううん、いいの。幸野君に全てを話すって決めたんだから」



焼肉食べ放題の看板や屋根の上に乗っているよく分からないワニのオブジェ、電車の中から見える景色はすぐに移り変わってしまう。


あの頃は、景色なんて見てなかったな。



「この電車に乗らなかったら、〝彼〟が乗っていなかったら……始まることも終わることもなかったんだ」



全ての始まりは、この通学電車から……。








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