君が涙を忘れる日まで。
二月も後半に入り、このクラスでいられるのもあと少しになった。


「ねぇ奈々、ちょっと聞きたいんだけどさ」

昼休みの教室でアユミとお弁当を食べていると、向かい合わせに座ったアユミが前のめりになり、顔を近づけてきた。


「どうしたの？」

「あのさー奈々って一組の浅木さんと幼馴染みなんでしょ？修司が浅木さんと付き合ってるってほんと？」


アユミから視線を逸らした私は一瞬考えた後、首を傾げながら答えた。


「そう……みたいだね」

「やっぱそうなんだ」

いつも元気なアユミが、妙に低い声で深刻そうに呟いた。


「なんで？」


二人が付き合っていると公言したわけじゃないんだから知らない人が殆どだろうけど、そういうことに敏感な人は気付くのかもしれない。


「なんか聞いた話なんだけどさ。その浅木さん、虐められてるらしいよ」


「……は？」


アユミの言葉に耳を疑った私は、箸を持ったまま石のように固まってしまった。


「ほら、修司ってモテるじゃん？優しいし、頼りになるし、顔もかっこいいから」

「あぁ、まぁそうかもね……」


「だからさ、修司ファンが意外と沢山いるんだよ。あからさまな虐めじゃなくてさ、修司に気付かれないように陰湿な虐めが続いてるらしいよ」



いつから……？

そう言おうとしたけれど、続いているアユミの話に耳を傾けながら、私は再びお弁当を食べ始めた。




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