君が涙を忘れる日まで。
六時間目の科学の授業は、全く頭に入らなかった。

香乃より先に修司が体育館に来たら、それとなく話してみよう。

修司とちゃんと話をするのは久しぶりだけど、もうそんなことは言ってられない。



着替えをして体育館に着くと、男バスはすでにそれぞれシュート練習をしたりウォーミングアップをしている。

修司は隅の方でバッシュを履いていた。


体育館に入った私は、そのまま修司の元へ向かう。



「あのさ……」

私から修司に話しかけるのは久しぶりだからか、少し驚いたように目を見開き、私を見上げた。


「香乃が……」

「ねぇ園田君」

香乃のことを話そうとした時、男バスの二年生のマネージャーが修司に声を掛けてきた。


「園田君さ、香乃どうした?」

「え?」

「いつも一番早く来て得点ボード出したり全部準備してくれるんだけど、珍しく遅いから」

「いや、なにも聞いてないですけど」


香乃が一番に来て?

そんなことをしてたなんて、今まで知らなかった。


ただ修司の側にいたいからマネージャーになったんだと思ってたし、あの時も……。


『ただ誰かを見ているだけの香乃とは違う!』


手を振り払った時の香乃の顔が、脳裏に浮かぶ。



「まぁそのうち来るか」

「はい。休むとは言ってないし、来ますよ」



分からないけど、モヤッとしたなにかが胸の中に影を落とした。




< 64 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop