君が涙を忘れる日まで。
「奈々?どうし」
「香乃、どうして遅いんだと思う?」

修司の言葉にかぶせるようにして、問いかけた。


「先生に、呼ばれたとか……」


そうかもしれない。

でも、そうじゃないかもしれない。


「どうしたんだよ、奈々?」

「私……」


今日見た一組の光景が甦り、当たってほしくない嫌な予感が頭を過った。


「なんかあったのか?話してくれ、奈々」


遅れるなら、必ず部員の誰かにそれを伝えるはず。

私だったら、ちょっと遅れるだけならいいかと思ってしまうけど、香乃は違う。



「修司は部活やってて」

「でも、俺も……」


香乃のことだから、自分が虐められているということを修司には知られたくないのかもしれない。


もしも私の不安が当たっていたら。そう思うだけで、体が震えるほどの怒りを感じた。



「香乃のことは、私に任せて」


修司にそう言い、キュッとバッシュの音を鳴らしながら体育館を駆け出した。


「奈々!」




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