君が涙を忘れる日まで。
旅の終わり。
*****
香乃と二人、毎朝同じ時間に家を出て三両目に乗り込むと、そこに立っているのは眠そうに目を擦っている修司。
私は笑顔で修司におはようを言って、三人で他愛のない会話を楽しむ。
修司のボケに私が突っ込んだり、バスケの話をしたり。
そして……楽しそうに笑う香乃に向けられる、修司の優しい笑顔。
それに気づいた時は、決まって外の景色を眺める私。
「毎日がその繰り返しだったとしても、人が沢山いる通学電車の中なら笑えていたんだ。でも……」
「神様は想像以上に意地悪だった。だろ?」
廊下の壁に寄り掛かり、しゃがみこんでいる幸野君が私を見上げた。
「うん。意地悪だった」
というのも、二年のクラス替えで私達三人は同じクラスになってしまった。
それでもなんとか笑えていたのは、香乃にはもう二度とあの時みたいな思いをさせたくなかったのと、この関係が壊れるのが怖かったから。
「まさか、同じクラスになるなんて思ってもいなかった」
「ついでに俺も一緒だけどな」
勢いよく立ち上がった幸野君は、そのまま二年二組のプレートが掛けられている教室の中に入って行った。
中に入るのを一瞬躊躇った私は、幸野君に手招きをされてゆっくり足を踏み入れる。