君が涙を忘れる日まで。
嘘の行方、大切な人の涙。
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「奈々、本当に大丈夫?」
眉間にしわを寄せ、不安そうに何度も同じ言葉を繰り返す香乃。
「大丈夫だってば、この時期はいつものことだし」
雨の季節が近づいてくると、昔から時々偏頭痛に襲われることがある。
一度病院に行ったけど、特に問題はないとのこと。
そんなに頻繁に起こるわけじゃないから私も気にはしていない。
本人がそうだというのに、香乃はいつまでたっても私の頭痛に敏感に反応してくれる。
まぁもし逆の立場なら、私も心配して大きな病院で精密検査を受けて来いと言っただろうけど。
「ちょっと休めば大丈夫だし、それプラス今日は生理だから、それもあるかな」
「それならいいけど。もう一回病院行ったら?」
「そうだね、そうするよ」
私がなにを言っても香乃の心配が治まらない時は、こうやって安心するような言葉を返すのもいつものことだ。
「それよりほら、みんな行っちゃったよ」
頭が痛いという理由で、体育の授業は休むことになった。
先生には保健室に行くと言ったけれど、恐らく頭痛薬を貰ってベッドに横になるだけだし、最初から保健室に行く気なんてない。
私は教室にひとり、窓から校庭を眺めていた。