君が涙を忘れる日まで。


  *


お昼休みを迎えた頃には頭痛も治まってくれたから、なんとか部活には出ることが出来た。

体育は休んでも、部活は絶対休みたくなかったから。

これがいわゆる病は気からというやつなんだろうか。


今日は男バスはトレーニングルームの日だから、女子が体育館の半面全部を使うことができる。


体育館の四分の一で練習することが多いからか、半面使える日はとても貴重だ。

それに、男バスが体育館にいないということは、練習にも身が入る。


もうすぐ三年生は引退。
今までみたいに個人的な感情に流されていたら、十人いる二年の中でスタメンを勝ち取ることは出来ない。

頑張らなきゃ。



「奈々、だいぶ調子戻ってきたみたいじゃん。一時はスランプっぽかったけど」

「はい、なんか上手くいかなくて悩んでたんですけど、最近は絶好調です」

先輩の言葉にそう返事をし、スリーポイントの位置からシュートを放った。


「ここだけの話し、奈々が入ってきた時は三年のみんなかなり焦ったんだよ」

「えっ?」

「中学からやってただけあって上手かったし。私達が引退した後部員を引っ張るのは確実に奈々なんだから、頑張ってよ」

小声で伝えてくれた先輩の言葉が嬉しくて、思わず泣きそうになってしまった。


「はい、ありがとうございます!」



教室では無理だけど、体育館では二人がいてもいなくても、部活に集中しよう。

この場所でボールを触って汗をかいている時だけは、嘘をつかなくて済むから。




< 84 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop