君が涙を忘れる日まで。
どれくらい眠ってしまったんだろう。
再び目を開けると、カーテンの外はさっきよりも少しだけ明るさを失っているようだった。
お母さんが置いていってくれた小さな置時計は、十七時を指している。
体を起こし、ふーっと小さく息を吐くと、布団の上に置いた自分の両手を見つめる。
すると廊下からバタバタと足音が聞こえてくる気がした。
その音は次第に大きくなっていき、私がいる病室の辺りでピタッと止んだ。
ーーガラッ!!
ノックもせずに突然開けられたドアに驚き、視線を移した。
「奈々っ!」
ただ名前を呼ばれただけなのに、涙がポロポロと零れ落ちていく。
言いたいことは沢山あるのに、涙が邪魔をして言葉にならない。
けれど、子供のように顔を歪めて涙を流すその姿に、私は精一杯声を絞りだした。
「……の、…うっ……香乃、香乃!」
すぐ近くにいるのに、凄く遠くに届けるかのように、何度も何度も声を出した。
「香乃!私……」
香乃は顏を歪めたまま、少しずつ近付き私の横に立った。
鼻をすする音と、時々漏れる声が静かな病室に響き渡る。
「香乃……ごめ」
ごめんね。そう言おうとした時、香乃が私の体を強く抱きしめた。
「奈々!奈々!」
その小さな体はとても温かくて、耳元で聞こえる声は、震えていた。