君が涙を忘れる日まで。
静寂を取り戻した病室で、香乃はずっと私の手を握り続けている。
子供の頃と同じ。
お母さんに怒られて泣いている私の手を、泣きながらずっと握ってくれていたあの頃と。
「ねぇ香乃、私の話しを聞いてくれる?」
香乃は真っ赤な目を私に向け、首を傾げた。
「凄く不思議で、有り得ないけど……でも、とっても大切な話を」
「うん」
「目が覚めたと思った時、私は制服を着てて……見下ろした先には、私が眠っていたの。それでね……」
キョトンとしている香乃の側で、私は話を続けた。
とても短かったけれど、きっと一生忘れられない旅の話を。
*