君が涙を忘れる日まで。
「ゆるいボールを高く上げることも勿論あるが、基本的にパスはこうだ」


さっきよりも明らかに強い力で真っ直ぐ投げたボールは、吸い込まれるようにして修司の手元にちょうどおさまった。


「痛って~」

思ったよりも強かったのか、修司は手をブラブラとさせて顔を歪ませた。

「あっ、悪い」

つい本気になってしまった俺は、修司の元に駆け寄った。


「いや、全然いいよ。分かったから。このくらいのスピードじゃないと取られるってことだろ?」

「うん、まぁそういうことだ」

「ありがとう。先輩の休憩が終わるまで、もう少し付き合ってくれるか?俺、貴斗に教えてほしい」


なんだ……こいつの目はなんなんだ。

まだそんなに親しい関係じゃないけど、駄目だ……我慢できない。


「お前は、人懐っこい犬か!その目は絶対チワワだな!」

「プッ、なんだそれ。うける」

「大丈夫だ。犬とボールは昔から仲良しだから、修司もすぐに上手くなる」

「いや、犬じゃねーし。貴斗って面白いな」

「とりあえず、まずは漫画を読め」

修司は意味が分からないといった表情で、口を半開きにしたまま首を傾げる。


「バスケ漫画を読めばある程度知識もつくし意外に参考になる。漫画だと侮るなよ!よし、今日貸してやる」


「えっ、今日?」

「そうだ。上手くなりたいんだろ?」

「あぁ、まーそれはそうだけど」

「よし、んじゃ決まりな!……で、お前の家どこだ?」




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