君が涙を忘れる日まで。
修司の説明を聞きながらそれらしき子を見つけた俺は、目で追った。

三対三をやっているようだけど、ジャージの色を見る限り相手は二年。


その子のドリブルはとても細かく、右手左手と器用に切り替えながら相手のディフェンスをかわしている。

背はそれほど高くないのに、リバウンドもよく取っている。


それになにより、シュートがとても綺麗だと思った。

膝を上手く使っていて力を入れているようには見えないのに、スリーポイントもよく決まっている。


高校生の女子のスリーポイントといえば、思い切り力を入れて一生懸命ボールを飛ばすというイメージだけど、彼女からはそれを感じられない。


「な?上手いだろ?経験者なんだろうな」

「ああ、多分そうだろうな」

「あの子と一対一やったら絶対負けるよなー」

「確実負けるな」

「おい、ちょっとは否定しろよ」


修司と会話をしながらも、俺の目はずっと彼女に釘づけになっていた。


確かに上手いけどそれだけじゃなくて、得点が決まった時に見せる笑顔。


こんなにも見入ってしまうのは、彼女の笑顔がとても綺麗だと思ったから。


輝いて見えるなんて表現もあるけど、別に光って見えるわけじゃない。

特別な理由なんてきっとない。


ただ、本当に嬉しそうに笑う彼女の笑顔に、俺の心臓はいちいち反応してしまっていた。






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