危険地帯



勢いで家を飛び出したから、携帯しか持ってきてなかった……。


お財布くらい持ってくればよかったな。



「博さん、ありがとうございます」


「いいってこのくらい。それよりどうしたの?」


「え?」


「ここに来るってことは、何かあったんでしょ?」



私の心の中が全てわかっているような言い方をする博さん。


博さん、すごいな。


なんで、わかっちゃうんだろう。


何もない日にだってここに遊びに来たりしているのに。



「言いたくなかったら、別に無理して言わなくもいいんだよ?」


「博さん……」


「でも、溜め込みすぎたらダメだよ」



博さんはそう言いながら、ポン、と私の頭を撫でた。


博さんはいつも私が悩んでいることを見透かしていて、それでも何にも気づいていないように寄り添ってくれる。


そんな博さんにだけは、昔からつい頼ってしまっていた。



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