危険地帯

ひとつのルール






『午前は自由にしていいよ~』



そう言われて、繁華街に来ちゃったけど。


期限付きの自由を、素直に喜んでいいのかな?


それに、これは本当に“自由”なの……?



そんなことを悶々と考えながら向かった先は、繁華街の片隅。


博さんのいる、レトロなカフェ。



カフェの扉を開けると、甘い香りがした。



「いらっしゃ……あ、羽留ちゃん!」



博さんの穏やかな笑顔を見た瞬間、締め付けられていた心が楽になっていく。


まるで、私を縛っていた頑丈な鎖が今だけ消えたみたいに。



私は、今日も博さんの前のカウンター席に座る。


すると、博さんがまだ何も頼んでいないのに、コーヒーを淹れてくれた。



「今日もお金ないんでしょ?」



……博さんには、敵わないなぁ。


私がお礼を言うと、博さんは優しく微笑んでくれた。



< 107 / 497 >

この作品をシェア

pagetop