危険地帯
太陽が照りついる暑い真夏日だけど、身体は冷え込んでいた。
あったかいコーヒーで、少しでも温まりたかった。
「何かあった?」
生クリームを泡立てながら聞いてきた博さん。
どうして、博さんにはわかっちゃうんだろう。
博さんはエスパーか何かなんじゃないかって思うくらい、博さんは私が何かを抱えていることに気づくんだ。
「私……何もできない自分が嫌いなんです」
気づけば、口が勝手に動いていた。
ついこぼしてしまった本音を、コーヒーの苦さが包んでいく。
「怖い人達と一緒にいるんですけど、逃げることも逆らうこともできなくて」
「うん」
「もうどうしたらいいかわからなくて」
「……そっか」
私の弱い気持ちが、泣き喚いている。
私が秘密をバラさない人間だということを彼らに伝えるには、どうしたらいいの?
黒龍の近くにいるだけでは、伝わりっこない。
そうわかっているのに、何もできない。
無力な自分に、腹が立つ。