危険地帯



博さんに会いに来て正解だった。


お父さんの再婚を、ようやく受け止められそう。


このまま家に帰っても、大丈夫そうだ。


今なら言える。笑顔を顔に貼り付けて、「結婚おめでとう」って。



たとえそれが、本音を隠した偽りでも。



どうして言ってくれなかったの?どうして私に結婚のことを相談してくれなかったの?


お父さんをそう責めたい気持ちを押し殺して、言いたいわがままを忘れて。


これから始まるであろう新しい日々を、快く迎えなければ。



私は博さんにお父さんの再婚のことを話すことはなかった。


ミルクティーを飲み終えるまで、博さんとどうでもいいことを笑って話した。



博さんの前では普通に笑えるのに、なんでお父さんの前では心から笑えないんだろう。


いつ頃からだっただろうか。


お父さんに、私の思っていることをぶつけられなくなったのは。


お父さんが、私が何をしても怒らなくなったのは。



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