危険地帯
ガラスが割られた音に、私はビクッと肩を上げる。
もう、やめて……。
喧嘩も、ガラスを割るのも、全て。
これ以上、嫌な記憶を思い出させないで。
それでも私は、目を瞑らなかった。
三人の闘う姿を、涙の膜が張られた視界に映していた。
司は元黒龍二人を相手に必死に闘うが、下っ端と呼ばれる人達と闘って体力を消耗してしまったのか、攻撃を避けるので精一杯な感じに見える。
律はまるで猫のような身軽な動きで相手を翻弄しているが、元黒龍の人に鉄パイプで片足を払われ、体勢を崩してしまった。
龍司という人は深月と一対一で闘うようで、龍司という人が振りかざした鉄パイプを深月は体に当たる寸前で止めた。
いつも簡単に喧嘩に勝っちゃう三人なのに……。
今日は本調子じゃないのかな?
「大したことねぇな」
「あ?」
龍司という人はボソッと呟くと、鉄パイプをもう一度振り下ろした。