危険地帯
ついさっきまで、片膝をついて、もう動けなさそうだったのに。
自分が負けて、精神的におかしくなっちゃったの?
「OK、OK。ナイスだよ、センパイ」
律は笑いながら、なぜか親指を立てて龍司という人を褒めた。
律の視線が、私へと移される。
「羽留も良かったよ~。その驚いた表情」
笑いすぎて涙目になりながらもそう言った律。
どういうこと?
「何言ってんだ、てめぇ。この状況わかってねぇのか?俺達が勝っ……」
「いやいや、あんたこそわかってる?この状況」
ようやく笑いが止まった律は、立ち上がりながら、龍司という人の声に重ねて問いかけた。
夏の夜風が、この場を通り過ぎる。
律は、不気味な笑みを浮かべていた。