危険地帯
逃げなきゃ。誰かを呼ばないと。助けて。
私も、倒れている男と同じような目に遭うの?
暴力を振るわれて、痛い思いをするの?
「めんどくせぇし、ちょっと眠ってもらうか」
「さんせーい!いい遊び道具になりそうだね~」
「もう疲れた。さっさと帰ろうぜ」
涙で濡れた瞳には、私の恐怖心なんてこれっぽっちも気にしてなさそうな不良達の冷酷な表情だけが映っていた。
アッシュゴールドの髪をした人がため息を吐いた直後、お腹に激痛が走る。
「っ、」
声すらも出ないくらい痛い衝撃が全身を襲い、意識がだんだんと遠のいていった。
なんで、こんな……。
いきなり殴られた驚きと苦しさが、私の感覚を支配する。
重くなっていく瞼が完全に閉じてしまう前に視界に入ったのは、
「おやすみ」
と囁いて、殴った後だというのに悪気なんて一切感じてなさそうに嘲笑う不良の姿だった。