危険地帯
出来上がったラーメンを、テーブルに置いて、食べ始める。
結局、羽留と律は何がいいかわからなかったから、醤油と塩を二つずつ作った。
「また腕上げたな」
一口食べてそう言った深月に、俺は何も返すことなくスープを飲んだ。
本当は、黒龍を辞めずに、明日も明後日もここにいたいけれど。
この世界に踏み込む前に交わした約束が、俺の気持ちを無視する。
たった二日、ここを離れるだけ。
そのことが、やけに心を重くする。
髪色も、ピアスがついていない耳も、醜く見えてしまう。
深月や律のように、派手な髪色にしたいし。
耳に穴を空けて、ピアスだってつけたい。
けれど、できない。
約束を破ることになってしまう。
正義もクソもないこの世界で、約束を守るなんてどうかしてる。
それでも、守らなければいけなかった。
破るわけには、いかなかった。
この約束は、俺の“傷”をさらに深くしないための優しさなのだから。