危険地帯
深月があんなこと言うなんて、意外だ。
わざわざ説明しろと言うとは思わなかった。
まあ、最初から説明するつもりだったが。
「あ、あの、ラーメンすごく美味しかった!……です」
二人きりのこの状況に固くなっている羽留は、自ら沈黙を断ち切って、口を開いた。
まだ俺達のことを怖がっているのか、最後、敬語になってしまった羽留。
もっと律みたいに気楽になればいいのに。
俺達の非情な喧嘩を見たら、怖がるのも無理ないが。
「それで、その……」
「なんだ?」
「さっきの、黒龍を抜けるって……」
一度目を伏せた俺は、やや怯えている羽留に視線を向ける。
それから、なんとなく羽留が手当てしてくれた腕に目を移した。
俺は小さく息を吸って。
俺が黒龍を辞めると言った理由を、脳内で文章化して言葉を並べて。
ゆっくりと、息を吐いた。