危険地帯
「もう考えるのはやめよう!あ、そうだ!確か、冷蔵庫に少し野菜があったからサラダでも作ろう!」
わざと陽気を装って明るく言ってみる。
元気な振りをしても、心は晴れなくて。
取り繕った笑顔が、ボロボロと崩れ落ちた。
……大丈夫、大丈夫。
アイツだって、いつも私が落ち込むと『大丈夫♪』って笑ってくれる。
今も、言ってくれている気がする。
私は、大丈夫。
だから、どうか脳裏を過ぎらないで。
あの“声”を、聞かせないで。
「――羽留」
耳をかすめたのは、悲しい過去ではなく、キッチンに来て様子を見に来た深月の私を呼ぶ声だった。