危険地帯
好物どころか、趣味も好きな色も、何も知らない。
再婚することすら、事後報告で、相談されることもなかった。
お互いに何も知らないのに、“家族”と呼べるのかな。
「あ、危ねぇ……!」
「え?」
ボーッとしていた私は、深月が私を注意する声で我に返った。
が、せっかく注意してくれたはいいけれど、もう手遅れで。
「熱っ……!」
蓋を取ろうとしたが、間違えてフライパンに触れてしまい、反射的に手をどけて声を上げる。
いつもなら、絶対にこんなミスしないのに。
つい考え込んでしまったせい……?
「大丈夫か!?」
「え、あ、」
火傷にテンパっていた私を心配した深月が、蛇口をひねって水を出し、私の手を引っ張って、火傷した部分を冷やしてくれた。