危険地帯



深月が、誰かの怪我を心配するなんて……。


ふと、博さんが言っていた言葉を思い出す。



『この世に、本当に怖い人なんていないよ』



本当に、その通りだった。


司も深月も、きっと律も、わかりにくいだけで、根は優しい気がする。


私は、怖いって決め付けて、何も見ようとしなかっただけだったんだ。



もっともっと、彼らを知っていけば、何かが変わるかもしれない。


私の心も、抱いていた感情も、運命すらも。



そう期待してしまうのは、なぜだろう。




「ったく、気をつけろよ」


「あ、ありがとう……」


「じゃあ、朝食できたら早く持ってこいよ」



ぶっきらぼうな態度を取る深月だけど、冷やしてくれただけじゃなく手当てまでしてくれた。


昨日私がした応急処置のお礼を兼ねて、私にも手当てしてくれたのかもしれない。



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