危険地帯



アイツになってからの記憶は、あまり覚えていない。


頭を殴られたからだろうか。


上半身を起こそうとすると、包帯が巻かれている頭にズキッと小さな痛みが走った。



「どうして、お父さんが……?」



久し振りに会ったお父さん。


再婚の話を聞かされたあの日から、お父さんは何も変わっていなかった。


痩せても、太ってもいない。


仕事でやや疲れているように見えるが。


私の知っているお父さんのままだ。



「病院から連絡があったんだ。羽留が入院してるって」



私が目を覚ましたことに安心したのか、お父さんの表情がふわりと柔らかくなる。


お父さんは、ベットの脇にある椅子に腰かけた。



もしかして、私の携帯に登録されたお父さんの連絡先を見て、病院の人が連絡したのかな?


家族への連絡は、当然のことだもんね。



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