危険地帯




私は、再婚の話を聞かされて家を出て行った日のように、病室から飛び出した。


お父さんの近くに、いたくなかった。


ズキズキと痛む頭と心臓を抑えて、できるだけお父さんから離れようと、遠くへ行こうと、駆けていった。



私が着ていたのは、病衣ではなく私の服で。


肩の部分についた私の血が生々しくて、吐きそうになった。



悲しくて、やるせなくて。


こんな私にアイツならなんて声をかけるだろうと考えたら、



『大丈夫♪』



しか、思いつかなかった。


……大丈夫、じゃないよ。


全然、大丈夫なんかじゃない。



泣きたいのに、泣けなくて。


心臓をナイフで貫かれたみたいに辛くて。



絶望感で、いっぱいだった。



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