危険地帯
病院の敷地を出て、雨の中を傘もささずに歩く。
私を打つ雨が、心地よい。
どれくらい歩いて、ここがどの辺なのか。
わからないまま、俯きながら前へ前へ足を動かしていた。
「羽留?」
私の名前が、聞こえた。
視線だけを上げると、そこには私を見て驚いている様子の深月がいた。
「どうしてここにいんだよ」
「……」
「お前、病院にいるんじゃ…………羽留?」
「……」
深月をただ見つめているだけの、でくのぼうのような私。
深月がさしているビニール傘に当たる雨の音が、うるさかった。
「どうしたんだよ」
「……」
「おい、聞いてんのか!?」
「……」
深月の迫力に怯えることも、問いかけられて頷くことも、できなかった。