危険地帯



暑さも寒さも感じない。


まるで、私はもう死んでいるんじゃないかと思ってしまうくらい。



「羽留!」


「……み、つき」



深月が何度か私を呼んで、私はようやく口を開いた。


あぁ、深月だ。


今、深月を視界に捉えた。



「なんでこんなところにいるんだよ」


「抜け出してきちゃった」



声はいつも通りに出せるのに、表情は固くて。


笑顔を作るのは得意だったはずなのに、今日は難しく感じた。



「抜け出してって……お前、頭は大丈夫なのか?」


「うん、平気」



頭は、大丈夫だよ。


頭の痛みには、耐えられる。



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