危険地帯
私は、逃げるように家から出た。
もうこんなところにいたくない、と本気で思った。
晴れ晴れとした真っ青な空が、私を嘲笑う。
昨日の雨のせいで、吸い込んだ空気は、ねっとりとしていた。
何もかもを忘れられるくらい、大声で叫んでしまいたい気分だった。
『大丈夫』
そんな私の脳裏をかすめたのは、アイツでも黒龍の三人でもなくて、博さんの笑顔だった。
博さんなら、私の話を嫌な顔一つせず聞いてくれる。
私のみっともない感情に、そっと寄り添ってくれる博さんに、会いたい。
足は勝手に動き始めていて、繁華街に向かっていた。
ゆっくりと進んでいたのに、だんだんとスピードが速くなっていって、気づいたら走っていた。
風を横切って、泣きそうな顔で、息が乱れても走り続けた。
一秒でも早く、博さんのカフェに行くために。