危険地帯
忍者は既に、黒龍のたまり場から出ていた。
クルッと振り返った忍者。
夜の冷たい風が、私の頬にキスをする。
余裕そうな忍者は、私達を見て目を細めた。
「また今度、会いましょう」
忍者の口は、そう言っていた気がする。
“気がする”のは、忍者の声が届かなかったから。
おそらく、忍者は口だけを動かしたのだろう。
また会うことがわかっているかのような言葉だった。
忍者は、闇夜に自分自身を隠し、気配を消した。
最後まで私達を弄んだ忍者に、深月と司と律は悔しそうにしていた。
今宵は、満月。
私を照らす満月の光によって、私の足元にできている影がより一層黒くなる。
その影は、どこか不穏な様子で私を見つめていた。