危険地帯
忍者は、黒龍と神雷が対立した日に、アイツを見ている。
黒龍にいる二重人格の女。
そんな“私”の存在が、気になっているのかもしれない。
「あ、あそこにいる奴らに、ちょっと聞き込みしてくるね~」
律はそう言うと、コンビニの前でたむろしている不良達のところに行った。
私は電柱に寄りかかって、律が戻ってくるのを待っていた。
――その時。
ふわっ、と風に乗ってやってきた香りに、神経を奪われた。
この前も、私の鼻をかすめた香り。
私を苦しめる、香り。
香りがした方へ、恐る恐る顔を向けると。
そこには、私を見て、不快感を堪えきれずに渋い顔をする、幼い頃から知っている人の姿が。
「お母さん……っ」
喉から漏れた私の声は、ひどくかすれていた。