危険地帯
お母さんは、わざとらしくため息を吐いた。
ビクッと肩が上がる。
遠くの方から、律の私を呼ぶ声が聞こえたが、私は反応できなかった。
「……最悪だわ」
晴れた空の青さが、私の心臓を締め付けた。
何も言えなくて口を閉ざす私に、お母さんの視線が噛み付いた。
「あんたがまだ、生きてたなんて」
お母さんのたった一言で、私の世界は色を失くす。
死んでしまえ、とお母さんの表情が言っていた。
見つかりそうだと、思っていたのに。
私の生きる意味が、やっと、光となって私の前に現れてくれたと、思っていたのに。
お母さんは、私に姿を見せたその光を、いとも簡単に握り潰す。
まるで、私には必要ないと訴えるように。