危険地帯




「でも実際、お前のことを誰ひとりとして心配してねぇじゃねぇか」



ズキリと痛む心が、鉛のように重く感じる。


なに一つ言い返せないのが、悔しい。



携帯に一つも連絡がないのが、証拠。


……そうだ。深月の言う通りだ。


私を心配してくれる人なんて、アイツ以外には、いない。



「私は、」


「独りじゃない、ってまた言うのか?」



私の声に重ねて、司が真っ直ぐ私を見ながら言った。


だって、しょうがないじゃん。


そうやって自分に言い聞かさないと、いつか現実に潰れてしまう。



幾度となく泣きたくて仕方ないと感じた気持ちを制御するように、独りじゃないと思い込まなければ、ひとりで立ち上がることすらできなくなってしまう。



家にいても、学校にいても、楽しさなんて一ミリも感じなかった。


家ではお父さんの帰りを待って、家事に追われて、孤独を感じて。


学校でも、自分の気持ちをうまく表現できなくて、孤立して。



今までやってこられたのは、アイツの存在のおかげ。



< 40 / 497 >

この作品をシェア

pagetop