危険地帯
太陽が沈んで、月が顔を出している真夜中。
まだ8月中旬で夏真っ盛りだけれど、夜は冷える。
ぶるっと身震いした私の目の前には、黒龍のたまり場である廃ビルが。
「今、行くよ」
虫達の鳴き声に、自分の声を紛れ込ませた。
一歩、一歩。
着々と進んでいく。
廃ビルの前にいる見張り役をしている黒龍の人達にお辞儀をして、廃ビルの中に入る。
私は顔パスなんだなあ、と些細なことで喜びながら、地下に続く階段を下りていった。
一段ずつ下りていく度、皆の声がだんだんとはっきりと聞こえてくる。
たまに私の名前も。
あ、また深月と律が言い争ってる。
千歳が、二人にからまれて。
司は呆れているんだろうな。
その場にいなくても、皆が今何をしてどんな様子なのか、わかるよ。
それくらい、一緒にいたから。