危険地帯
司はため息を吐いて、千歳は年上らしく見守っていた。
いつも通りの雰囲気に、私は笑みをこぼした。
瞬間、相変わらずこの場所には似合っていないシャンデリアの向こうにある、ソファの後ろにかけられている古びた時計が、音を奏でた。
――ゴーン、ゴーン。
その音はコンクリートを伝って、大きく轟いた。
「えっ、もうそんな時間~!?」
「やべぇ、羽留の“影”が起きるぞ」
「離れろ、律」
「もしかして、これって危ない感じ?」
司に言われた通りに律は私から離れて、全員、私と一定の距離を置く。
真夜中零時を告げる鐘が、私の全身に響いた。
重くなった瞼が、閉じられていく。
眠りに落ちた私の意識の代わりに目醒めたのは、アイツの意識。
パッチリと開かれた、薄い赤に染まる瞳。
妖艶に緩められる口元。
ひらひらと振られる手。
「ハロー、黒龍さん♪」