危険地帯
二人の声を無視して歩こうとする神雷の総長。
「岳斗、待てよ!まだここの片付けが……」
「片付けくらい黒龍の奴らがやるだろ」
てっきり言い争いが激しくなると思ったのに、あっさり帰っちゃうんだ……。
トップの余裕ってやつかな?
「待てよ」
私達から離れていく神雷を引き止めた深月。
神雷の三人が足を止めた。
神雷の総長は、目だけをこちらに向ける。
「俺達と闘えよ」
深月の声の重みを感じた。
二つの族の意思のすれ違いによる怒りを全て込めたような深月の声に、私の手はこ刻めに震え始める。
「闘う理由がねえ」
「理由?そんなの“ムカつくから”で十分だろうが」
神雷の総長はそれ以上何も言うことなく、再び足を動かし始めた。