危険地帯




「や、め……っ」



たった三文字なのに、それすらも全て言えない。


深月は、私の喉を握り締める力をさらに強める。



「うっ、」



息が、できない。


苦しくて仕方がない


涙目になっていく。


やめ、て。お願いだから、手を放して。




「っ……」




意識が遠のいていく。声が出なくなってきた。


もう、やめて。



呼吸ができなくなって、もうダメだと思った私の耳に、


――ゴーンゴーンと、昨日も聞いた古びた時計から鳴り響く、真夜中零時の鐘の音が聞こえてきた。



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