危険地帯
取り乱していた心が、落ち着いていく。
辺りを見渡すと、いつの間にか家の近くにある繁華街まで来ていた。
私の足は、無意識のうちにある場所へと向かっていた。
繁華街の片隅にある、小さなカフェ。
レトロな趣のあるそのカフェの扉を、そっと静かに開けた。
「あ、いらっしゃい、羽留ちゃん」
「お久し振りです、博さん」
カフェに入ると、数名の客と、カウンターでスムージーを作っているこのカフェの店長で私のいとこの素野 博【ソノ ハク】さんがいた。
穏やかな博さんが営んでいるこのカフェは、昔から私の癒しの場だった。
何かに悩んだ時、泣きそうになった時、不安になった時。
博さんは、私を導いてくれるような言葉と甘いスイーツをくれる。
「ご注文は?」
博さんの目の前のカウンター席に座ると、博さんはメニューを渡しながら聞いてきた。
「私、お財布持ってきてなくて……」
「じゃあ、何かサービスしてあげるよ」
博さんは優しく微笑みながらそう言って、私にミルクティーを淹れてくれた。