君と僕の白昼夢
俺は人がいなくなるまで席についていた。
迫る恐怖に、耐えるように無言で。
俺の様子を見たからなのか、日和はカフェにも誘ってこない。
やっぱり運命は、変えられるはずなんだ。
日和と俺だけになったとき、最初に口を開いたのは日和だった。
「卓…?帰らないの?」
「ああ…帰るよ…」
俺は立ち上がると歩き出した。日和は不思議そうに俺を見ていたが付いてきた。
昇降口まで無言だった。
外は夕日色をしていた。綺麗な赤。
外に出ると俺の鼓動はよりいっそう早くなった。
日和がいつもの方角に歩き出したとき、俺は後ろから日和を呼んだ。
「日和!」
「ん?」
日和は立ち止まって振り返る。
もう、もう二度と見ることのできない眩しい笑顔を俺に向けた。
心が張り裂けそうになる。
涙が出そうになる。
だけど堪えて。言わなきゃいけないことがある。
日和との距離は2メートルくらいあるだろうか。
それよりも離れず、近づかず、俺は覚悟を決める。
「あの…さ」