君と僕の白昼夢


そして、二階建ての家が見えてくる。

俺の家だ。



家に親はいない。共働きだ。

帰ってくるのは夜遅く。

でも俺はひとりでいるわけじゃない。


「おかえり、兄ちゃん」


リビングは大きめで、四人家族にはちょうどいい。

明るめの黄色やオレンジで統一された部屋。

棚には家族写真が置いてある。

そんなリビングのソファーに座ってお菓子の袋を持ちながら俺の方を見て言うのは、

「ただいま、佑」

高校一年の俺の弟、佑(タスク)だ。

俺とは違って昔からうるさく、友達も多い。
しかも結構モテるらしい。

勉強が得意な俺とは違い、佑は運動神経が優れている。

相違点が多い。

しかし声も髪色も俺にそっくりだと色々な人に言われてきた。

最近は目が悪く、黒縁のメガネをしている。

高校は俺と同じだ。

「今日はいつもより遅いね」

佑はホラー番組を見ながら俺に言う。

テレビの中から悲鳴が聞こえて、一瞬俺は固まった。

「そう…だな。

ていうか、またホラー見てんの?」

「ホラーじゃないよ。都市伝説」

同じだろ…

「へ、へぇ…」

俺が返事をすると、

「あ、なんか食べる?それとも飲む?」

「いや、大丈夫」

俺はリビングを出て二階の自分の部屋に行こうとする。

「えっ、また上行くのー?

そう言えばおばあちゃんからまたおはぎ届いたよ」


「電話しとくよ」

「あとで上持っていくね」

佑はただただムードメーカーなだけではなく、気がきく。

優しい性格が人を寄せ付けるのだろう。

「ありがとう」


俺はそんな弟に微笑んで二階に向かった。

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