君と僕の白昼夢


全く周りを見ていなかった。

廊下に出た瞬間、走ってきた人とぶつかった。

お互い走っていたせいか、相手は尻もちをついて転んでいた。

そして何かを落とした。


「あ、大丈夫…ですか」

俺がその人を見ると…

「あ、すみません…急いでいたもので…」

眼鏡をかけたロングヘアの女の子だった。


ん…?


あれ?この人…


「大丈夫ー?瀬川さん」

日和が彼女に駆け寄る。

…瀬川…

あぁ!

同じクラスの…!!いつも休み時間になるたびに本を読んでいるやつか…

気づかなかった…

「大丈夫…って…立花くん…」

瀬川は俺のことがわかったようだ。

「ごめんね…」

申し訳なさそうに立ち上がる。

ふと彼女が落としたものが目に入る。

本だった。


俺はそれを拾って瀬川に渡す。

「俺もごめんな。落としたぞ」

ん…?


急いでいるのか瀬川は目にも止まらぬ速さで本を受け取ると、

「ありがとう、ごめんね」

そう言って走っていってしまった。

一瞬のできごとに俺は唖然としていた。




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