君と僕の白昼夢


「で?海だっけ?」

何だかんだ嬉しそうに聞いてくる日和。

「あ、ああ…」

ホームルーム後、日和がやってきた。



さあ…始まるぞ…



「あ、じゃあな!卓!川島!」


健太郎は部活へ向かった。


「じゃあな」

「ばいばい!」



そして2人で教室を出る。


昇降口まで無言だった。ずっと。

外は少し曇り始めていた。

灰色の雲が空を覆っている。


昇降口を出て、校門を過ぎてから口を開いたのは日和だった。


「ねぇ、なんで海なの?」

「え、うん…なんとなく…」

理由なんて一つしかない。

でも口が裂けても言えない。

「へー…珍しい…」

不思議そうにする日和。

そりゃそうか…

「まあ…たまには…てか暇だし…」

「私も暇!」

日和は満面の笑みで俺を見た。

俺もつられて微笑んだ。

ああ…あと1時間もすれば…

近づく“その時”が、怖くて仕方ない。

鼓動がまた早まる。

心が折れそうだ。

誰かひとりでも分かってくれる人がいたなら違うのかもしれない。

でもそんな人はいない。

絶望だ。

真っ暗闇に突然1人で立たされたように、夜道で街頭もなく、車の音も聞こえなくなったように。

でもきっとここから抜け出せないよりは、日和が死ぬのを見続けるよりはいいから、その思いが俺を突き動かすのだろうと思う。

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