君と僕の白昼夢


「でも海なんて今年初めて行くかも!

ちょっと天気悪いけどね」


日和が言った。

そりゃ、今は春だからそうなるだろう。

「あ!また夏行こうね!」

日和とは中学の頃の友達たちや、家族ぐるみでなどなんだかんだ毎年一緒に海に行っている。

「そうだな…」

そうしたい。本心はこうだった。


夏か…

海に行ったり肝試ししたり…

日和とは本当に小さい頃からずっと一緒なんだな…

そう思うと今までの記憶が蘇ってきた。

日和…。

笑顔ではしゃぐ日和。暗闇に怯える日和。

俺の名前を呼んで、隣を歩く日和。

そして今もーーー。

日和は鼻歌を歌いながら俺の隣を歩いている。

日和と歩く車道側が、俺の当たり前の居場所かと思っていた。

でも…

絶対なんてない。

この場所が、俺のものじゃなくなったら…?

誰かに取られたら…?

そう思う自分がいることに、最近気づいた。

一緒にいて楽しい友達。

それもそうだ。きっとそうなんだけど。

何かが突っかかってスッキリしない。

だって日和は大人に近づくにつれて綺麗になっていくから。

俺だけ置いていかれている気がして焦って。

そして初めて気づくんだ。




ああ、この子は誰にも取られたくないな…と。


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