世界が終わる音を聴いた
◇世界が終わる音を聴いた
真っ赤な夕日を背に、真っ白なスーツを着て真っ黒な髪を垂らしたその人は、落ち着いた声で言った。
「お前の命の期限はあと1週間。限られた時間をどう生きるのかはお前次第だ」
時間が止まっているのではないかと思うくらい静かな部屋に、やけにはっきりと、くっきりと私の耳に届く。
逆光でその人の表情は見えない。
笑顔だった気もするし、無表情だった気もする。
垂らした髪は肩を通りすぎるくらいまであって、パッと見た目では男女の判別もつけづらい。
その声音から察するに、男性なのだろう、というくらい。
“彼”は、言葉を紡いだ後しばらく沈黙のままそこに佇む。
読み解くことのできない彼の表情が僅かに変わったように感じた、次の瞬間、風がカーテンを揺らした。
バサバサバサ、と机に置きっぱなしになっていた日記帳を風がめくる。
あんなに静かだった部屋に、音が戻ったと思ったら、すでにそこに人影はなかった。
部屋には、思い出したかのように時計の秒針がカチカチと時を刻んでいる音が響いている。
今しがた自分に起きた、不可思議な出来事が、夢ではなく現実であることを何故だか私は理解していた。
「あと、1週間……」
――――命の期限を唐突に突き付けられたその日。
私は、世界が終わる瞬間の音を聞いた気がした。
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