世界が終わる音を聴いた
レジでお会計を済ませた俊平さんは、そのまま出入り口へ向かい、お店の札を“close”に変える。
……私もお客さんですけど、という言葉はもうこの際言わない。
「chiyaちゃんの出演料、安いけど今日のランチでもいい?」
そんなことを言って笑う。
「元から貰うつもりないですよ」
「そう言うわけにはいかないよ。悪いけど、これでチャラにしてね」
と、話した直後、突如として店内のBGMが止まった。
それはまぁ、closeを出した時点で俊平さん曰く身内になっているのでわかるのだけれど、ふっと店内の照明が落とされたことで私は訝しく思い周りを見ると。
「Happy birthday to you.Happy birthday to you.Happy birthday dear chiyaちゃん Happy birthday to you」
シキさんの歌声で、この空間が埋め尽くされて、私の目の前にホールのケーキが現れた。
歌っているのはシキさん。
ケーキを持ってきたのはオーナー。
そしてしたり顔で笑っているのが俊平さん。
この人たちは、全く。
「chiyaちゃん、早くろうそくの灯消さないと」
俊平さんに促されて私は、ふぅ、と息を吹き掛ける。
「お誕生日おめでとう」
「おめでとう」
「……おめでとう」
「ありがとうございます」
お祝いの言葉に、すっかり涙腺が緩くなって、目頭が熱くなるのを感じた。
ずるいなぁ、もう。