世界が終わる音を聴いた
「え、泣いちゃう感じなの?」
「だってあの無口なオーナーまで祝ってくれるとか」
「……俺のせいなの」
「違います」
「可愛いわねぇ」
「お祝いしようなって言ってたよな?」
「それはそうですけど。今だとは思ってもなくて……」
目頭が熱くなるどころではなく、滴が頬を濡らすものだから皆が慌てたりよしよしと頭を撫でてくれたり。
「でもね、chiyaちゃんたら、来るのが早いわよ。ケーキ間に合わないかと思ったわ」
「だからじっくり引き留めておいたろー?」
「すごくせっついちゃって、おかげでこのケーキ出来立てホヤホヤよ?食べましょ!」
「はい。本当、ありがとうございます」
元々昼間でそこまで暗かったわけでもないけれど、店内の照明を戻してテーブルを囲む。
真ん中にどんと置かれたケーキは明らかに4人で食べるには大きすぎて笑ってしまった。
多分これじゃ、ひとり2ピース食べなくちゃ間に合わないんじゃないかな?と思っていたら、オーナーはその大きさのケーキを豪快に4等分するものだからまた笑った。
「大きすぎやしませんか?」
「いや、食べられるだろ」
「兄さんのケーキは美味しいもの」
その言葉は本当で、あまりくどくなくてスポンジ生地も軽くて、おまけにフルーツがドサッと乗っていたからかペロリと食べてしまった。
「私ついさっきランチ食べたんですけど」
「大丈夫よ、chiyaちゃんまだ若いし。細いから」
さすがに満腹になりすぎたお腹をさすると、シキさんが慰めてくれた。
きょとん顔の男性にはわかるまい。
「ありがとうございます」
何度目かのお礼を伝えると、そのまま皆が立ち上がり片付けをして男性ふたりは休憩へ。
残されたシキさんは片付けをして、私は片付けはいいよという言葉に甘えて、そのままステージで軽く音出しをした。
家ではなく、ある程度の環境の整った場所で鳴らす音は心地よく響いて、肩の力が抜けていくのがわかった。