世界が終わる音を聴いた
通しリハーサルじゃないけれど、全部の曲の感触を確かめてキュッと音を止ませた。
「選んだ曲、全部chiyaちゃんらしいわね」
座っていたシキさんが穏やかに微笑んでいる。
「ありがとうございます」
「オリジナルの曲、タイトルは?」
「考えてなかったですね、そういえば」
「chiyaちゃんらしい」
「……いっそこのまま、タイトルにしちゃおうかな」
「え?」
「“未定”って。恋って、いつ落ちるのか分からなくて、どんな人を好きになるのかも分からなくて。心はコントロールできないじゃないですか。恋してたって、急降下急上昇もあるわけで、この歌はキラキラした恋の歌だけど、キラキラの恋の中でもやっぱり1分先は“未定”だから」
「良いわね」
「はい」
“Beautiful Days”
“テネシーワルツ”
“見上げてごらん夜の星を”
“未定”
“Find My Way”
並べた5曲は流れのメリハリだとか考えてなくて、歌いたいものだけを並べた。
プロだったら失格だろうけれど、アマチュアの最後の日だ、多目に見てほしい。
「さて。まだ時間があるけれど、このあとはどうするの?ここにいる?」
「いえ、一度外にいきます。ギターだけ、置いていっても良いですか?」
「もちろん」
「ありがとうございます。お願いします」
私はそのまま、ギターをシキさんに託してお店を出た。
昼間から顔を出していた太陽と、朝の雨が嫌な具合に蒸し暑さを醸し出している。
数歩歩いただけで汗が吹き出してきた。
まだ沈む気配の見せない太陽に睨みをきかせても効果のないことを知っている私は、そのまま電車に揺られて会社方面へと向かった。