世界が終わる音を聴いた
着替えと化粧を終えてリビングに行くと、すでに用意されている朝食。
ありがたい。
朝食を作らなくても良いという事実は、多くの人がそうであろう“朝の戦いの時間”に、とても優位だ。
日々当然のこととして行っている世の中の独り暮らしの人々は、称賛に値する。
それも女性なら、化粧の時間も加算される。
おまけに、これは女性に限られた話ではないが、子供がいるとなればお世話の時間も必要で、それはもう尊敬しかない。
母からはよく、あんたは幸せだね、と冗談とも本気ともとれるお小言を頂戴するが、全くその通りなのでなにも言えない。
今日も耳に痛い言葉を甘んじて受け入れながら、仏壇で手を合わせる。
写真の中のヒナちゃんは今日も笑顔だ。
父の会社は自宅から1時間ほどかかるため、すでにそこに姿はなく、今にも玄関から出ていくところだった。
テーブルに着き、大きな声でそこから、いってらっしゃい、と送り出す。
さて私も早々にご飯を食べて仕事に向かわなければ。
「いただきます」
ばくばくと用意されていた朝食を口に運ぶ。
うーん、炊きたてご飯に雲丹海苔は最高だわ。
とはいえ、しっかり味わってゆっくり食べる時間なんて無いから、おなすの御御御付と納豆を次々と口に入れていく。
そんな姿を見た母が正面でご飯を食べながら呆れて言う。
「あんたは……。いつになったら、お婿さん来てくれるんだかねぇ。その調子じゃ、ねぇ」
これもまた耳の痛い話だ。