世界が終わる音を聴いた
……―――ふわりと意識が芽生えたのは、なぜだったのだろう。
それについては分からないけれど、とにもかくにも、私は現状を理解した。
あの光に包まれた瞬間に、私はトラックに衝突して間も無く死亡したのだろう。
両親には悲しい思いをさせていると思う。
まさかずっと健康でいた我が子がふたりとも先に逝くだなんて想像だにしていなかっただろう。
ごめんねと言っても、届かない。
ありがとうと言っても、届かない。
死ぬということは、そういうことだ。
こんな今になって、ようやくわかることがある。
ハデス、あなたのいっていた言葉の意味を理解する。
『本当に、今の自分のままでいいのか』
死は誰にも等しく。
その時がいつ訪れるのかなんて、知る由もない。
生きることはつまり、死ぬことだ。
生きることを臆することなかれ。
きっと、そういうことでしょう?
ハデスという存在が私のもとに来てくれたことで知ったことは、そういうことだから。
人が死ぬときに、全く後悔の無い死に方ってあるのかな。
この人生に一片の悔いもないなんて人が、いるのかな。
ありふれた例えかもしれないけれど、人生が一方通行の道だとしたら、時にはいくつも分かれ道が存在していて、その時々で自分で道を選んで歩く。
あのときあの道を選んでいたら?そんなことを思わない人は、一本道を歩いてきた人くらいだろう。
けれど、人生という道にはおそらく、一本道はきっとなくて。
一本道だと信じて歩いてきた道だとしても、立ち止まって振り返れば違う道があったことに気付くかもしれない。
そのときその人は、後悔するのだろうか?